その教師がかつて担任を受け持ったクラスで、闘病生活の末亡くなった生徒さんがいたそうだ。
公立中学だから、異動してくる前のどこか別の学校の話だ。
ワルの多い学校だったそうだけど、その生徒さんは病弱でも頭が良くて一目置かれていた。
最初は登校していたんだけど、ある時を境に入院してしまい、そのまま、という事だ。
翌朝HRの時間にその教師が花束を持って教室へ入ったら、何も言わずともクラスメートたちは察して泣いた。
頭の悪い学校だったけど、そのクラスメイトは多くが医者や看護婦になった。
その教師にとっては生涯で一番の生徒たちだそうだ。
その教師は、今の話を自分の担任のクラスではしない。
代わりに「お前たちが俺の一番の生徒だ」と言う。
その時僕は、この教師の胡散臭さの正体を知った。
どこか言動に嘘を感じていたんだ。
納得して、「ああ、この先生意外とまともなんだ」と思った。
でもやっぱり教師として尊敬することもなかった。
ポジティブでもネガティブでもない、これが人間か、という話。
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